女子野球部をもつ高校が年々増加し、2025年春の選抜大会では54校+連合1チームの計55チームとなりました。
しかし、女子野球部のある高校に進学するという選択肢が広がる中、男子野球部に所属して野球を続けている女子選手の存在も忘れてはなりません。
公立or私立という選択環境、自宅から通える範囲の女子野球部の有無など…
そして女子野球との違いや経験など…
高校の女子野球部ではなく、男子野球部の中で懸命に野球を続けたエピソードにインタビュー形式で迫ります。
2025年5月8日更新
目次 |
なぜ男子野球部へ? |
男子選手の中での日々 |
女子の連合チームでの経験 |
今、振り返ると |
編集後記 |
なぜ男子野球部へ?
今回お話を伺ったのは、静岡県出身の島田朱諒(あかり)さんです。
2025年現在25歳という世代にとっては、今ほど全国各地に女子野球が存在していたわけではなく、当時は静岡県内に女子野球部を持つ高校もありませんでした。
島田さんは静岡県立磐田南高校へ進学、高校・大学と男子の野球部所属という形で野球を続けました。
\なぜ?/
Q. 寮生活という選択肢もゼロではない中、なぜ地元の高校で男子野球部の中でやるという選択肢をとったのか?
A. 私が中学生だった当時、女子硬式野球部のある高校はほとんどが私立高校でした。
また、自宅からの距離もかなり遠かったため、寮生活は必須・・・とても無理を言える状況ではありませんでした。
さらに、勉強面においても地元の進学校に通った方が、野球と勉強を両立することができる環境にあると考えました。
私自身、大学へ進学したいと思っていましたし、両親もそれを望んでいました。
ただし、受け入れてくれる男子野球部を探す必要がありました。
高校入試前に何校かの野球部に入部を承諾していただけるか自ら聞いて回りました。
もちろん、受け入れてもらえるばかりではありませんでした。
唯一、快く受け入れていただけたのが静岡県立磐田南高校でした。
男子選手の中での日々
Q. 男子と一緒に練習するという毎日はどのようなものだったのか?
A. 男子選手の中で野球を続けるというのは簡単なことではありませんでした。
中学生の頃は対等に戦えていた体力や筋力面で差を感じることが多々ありました。
特に雨の日や冬練では、他の選手のペースについていくことができず、男女差を身に染みて感じました。
常に悔しさともどかしさを感じていたことは確かですが、周りの男子選手に励まされながら何とか食らいついていた高校野球生活でした。
力で男子選手に敵わないのなら、技術を磨こうと前向きに練習に取り組んでいました。
ランメニューでは一人遅れをとることも
女子の連合チームでの経験
Q. 女子野球部のある高校以外でプレーする女子選手による合同チーム "丹波連合" での活動は?(丹波連合として女子高校野球の全国大会へ出場)
A. 高野連の規則により、高校野球の公式戦に女子選手は出場することができません。
そのため、丹波連合という合同チームでの試合出場は私のモチベーションのひとつでした。
男子野球と女子野球の違いに戸惑いながらも、女子の中で野球をすることができたのはとても良い経験だったと思います。
また、同じく男子野球部に所属している女子選手との交流はとても刺激になりました。
卒業してからも連絡を取り合うなどかけがえのない仲間となっています。
今、振り返ると
Q. さまざまな葛藤や壁にぶつかることもあったと思うが、今振り返ると?
A. 当時を振り返り、もし女子野球をやっていたら…と考えることもないとは言えませんが、やはり私は男子野球部で野球をするという選択をして良かったと思います。
男子のスピードやパワーの中で揉まれたおかげで、習得・向上した技術がたくさんあり、今ではそれが自分の財産となっています。
現在は全国各地に女子野球部が創部され、野球をやる女の子も珍しい存在ではなくなりました。
選手が好奇の目にさらされることも少なくなったことでしょう。
野球をやりたいと思う女の子が困らない世の中になっていくことは私も喜ばしく思います。
進路に迷っている中高生もたくさんいます。
環境がないから野球を諦めるのではなく、いろいろな選択肢を模索して納得のいく選択ができることを願います。
その選択肢のひとつとして私の前例が役に立てば嬉しいです。
♪おまけ♪
社会人になっても野球に携わりたいという思いがありスポーツ用品店に就職を決めました。
グラブの修理やスパイクの加工などまだまだ修行中ですが、自分の経験も活かしながら頑張っています!
編集後記
今回お話を聞いた島田さんとは2020年の静岡女子野球フェスタでお会いしました。
イベント内で「男子の中でやっている女子選手もいます!」と勇気をもって発言していたことを今でも覚えています。
私自身は中学までは男子の硬式クラブチームでプレーしていましたが、中学の時点でパワーやスピードの差を痛感していました。
そんな中、高校・大学まで男子の中で続け、社会人となった今『その選択をしてよかった』『同じような環境や境遇の女の子や保護者の方の力になれれば』と、素敵な言葉で今回の取材を受けていただいた島田さん、本当にありがとうございました!!
これからも女子野球・WOMEN'S FORCE・野球用品関係など、さまざまな場面で一緒に取り組めることを楽しみにしています!
フィールドフォース 小林